「海外からのお客さまが増えてきたので、ホームページを英語にも対応させたい」「インバウンドを取りたいが、多言語サイトの費用がどのくらいかかるのか分からない」——ここ1〜2年、こうしたご相談が確実に増えています。とくに宿泊・観光・飲食・小売、それに海外向けの販売を考えているメーカーや不動産の方から多くいただきます。
多言語対応は、実は「いくらかかるか」よりも「どこまでやるか」を先に決められるかで、費用も満足度も大きく変わる工事です。全ページを翻訳しなくても成果につながることは珍しくありませんし、逆に安く済ませたつもりの自動翻訳だけで、かえって信頼を落としてしまう例もあります。
この記事では、多言語サイトの制作費用の目安と、対応方法の選び方、そして見落としやすい「運用の手間」までを、制作の現場からご説明します。金額はすべて当社の現行料金(税抜・2026年8月時点)です。
多言語サイトが本当に必要になるのはどんなときか
最初に整理しておきたいのは、多言語化は「あった方がよい」ではなく「無いと取りこぼしている」状態のときに投資効果が出やすいということです。次のいずれかに当てはまるなら、検討する価値が高いと考えています。
- 予約・問い合わせ・注文の一部が、すでに海外のお客さまから来ている
- 電話やメールで英語のやり取りが発生していて、対応に時間を取られている
- 旅行会社や海外の仲介サービス経由の売上が大きく、手数料の負担が重い
- 海外の展示会や商談で、名刺代わりに見せられる英語ページが無くて困っている
反対に、「まだ海外からの反応はまったく無いが、いずれ必要になりそう」という段階であれば、全ページの多言語化よりも、まず英語1ページ(会社・商品の概要と連絡先)から始めるほうが費用対効果が高いことが多いです。1ページなら、既存サイトへの追加として小さく始められます。
宿泊業の方は、多言語対応を単体で考えるより、直予約を増やす取り組み全体の一部として設計したほうがうまくいきます。詳しくは旅館・ホテルのホームページで直予約を増やす方法でも触れています。観光・体験事業の方は観光・体験ツアーのホームページで予約を増やす方法もあわせてご覧ください。
多言語対応の3つのやり方と、それぞれの向き・不向き
多言語対応と一口に言っても、実際の作り方は大きく3通りあります。ここを取り違えると「安くしたはずが伝わらない」「高くしたのに更新できない」という食い違いが起きます。
| やり方 | 内容 | 向いている場合 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 自動翻訳の埋め込み | 翻訳サービスをサイトに組み込み、機械翻訳で表示する | とにかく最小の費用で読めるようにしたい | 商品名・料理名・料金条件の誤訳が起きやすい。検索エンジンに正しく評価されにくい |
| 言語ごとにページを作る | 日本語とは別に、その言語のページを用意して公開する | 予約・購入まで到達してもらいたい | 制作費と、更新のたびに全言語を直す手間がかかる |
| ハイブリッド(推奨) | 主要ページだけ言語別に作り、それ以外は日本語のまま案内する | 費用を抑えつつ成果を出したい | 「どのページを主要とするか」の判断が必要 |
多くの中小事業者さまにお勧めしているのは3つめのハイブリッドです。実際に海外のお客さまが見るページは、トップ・サービス(客室・プラン・商品)・料金・アクセス・予約や問い合わせフォームに集中します。全50ページのうち、まず7〜10ページを丁寧に用意するだけで、予約や問い合わせまでの導線は成立します。
なお、自動翻訳を「補助」として併用するのは有効です。主要ページは人の手で用意し、詳細ページは自動翻訳で読めるようにする、という組み合わせなら、費用と網羅性のバランスが取れます。
言語切替が実際にどう動くのかは、できること(機能の実例)のページで、日本語・英語・中国語を切り替えられるデモを触っていただけます。文章だけの説明よりも、社内で共有しやすいと思います。
多言語サイトの費用の目安
当社の現行料金は次のとおりです。多言語対応は「1言語ごと」の加算で考えます。
| 項目 | 当社の目安 | 一般的な開発会社の相場(当社調べ) |
|---|---|---|
| 多言語対応(1言語) | 13〜20万円 | 50〜150万円 |
| 初期セットアップ費(今のサイトを活かして機能だけ足す場合のベース) | 3〜5万円 | 10〜30万円 |
| ライトリニューアル(見た目・スマホ・導線を整える) | 13〜20万円 | 50〜120万円 |
| 標準リニューアル(下層ページも作り直し+SEO初期設計) | 25〜40万円 | 100〜250万円 |
| 新規Webサイト制作 | 30〜48万円 | 120〜300万円 |
| 予約・空き枠管理 | 25〜40万円 | 100〜300万円 |
| オンライン決済 | 13〜20万円 | 50〜150万円 |
これを組み合わせると、実際のご相談はおおよそ次の3パターンに収まります。
- 今のサイトに英語を足すだけ:初期セットアップ費(3〜5万円)+多言語対応1言語(13〜20万円)=16〜25万円
- サイトを整えつつ英語・中国語に対応:標準リニューアル(25〜40万円)+多言語対応2言語(26〜40万円)=51〜80万円
- 新規で作り、海外からの予約まで受ける:新規制作(30〜48万円)+多言語対応1言語(13〜20万円)+予約・空き枠管理(25〜40万円)=68〜108万円
金額に幅があるのは、翻訳するページ数、原稿を誰が用意するか、予約や決済まで多言語で通すかによって作業量が変わるためです。ご相談の際は最初に範囲を文字にして、その範囲での金額をお出しします。他の機能と組み合わせた概算はかんたん見積もりでその場で確認できます。
翻訳の原稿は誰が用意するか
費用が大きく動くのがここです。選択肢は3つあります。
- お客さまが用意する:社内に語学ができる方や、取引先の翻訳者がいる場合。制作費は最小になります
- こちらで下訳を用意し、お客さまが確認する:もっとも多いパターンです。専門用語・商品名・料金条件はお客さましか判断できないため、確認は必ずお願いしています
- 専門の翻訳者に依頼する:法務・医療・技術文書など、誤訳が事故になる内容の場合。別途費用が発生します
料理名・アレルギー表記・キャンセル規定・法的な注意書きは、機械翻訳のままにしないことをお勧めしています。ここだけは人の目を通す価値があります。
見落としやすいのは制作費より「運用の手間」
多言語サイトで後から苦しくなるのは、費用ではなく更新作業です。日本語のお知らせを1本追加するたびに、英語・中国語も直すのか。直さないなら、どう見せるのか。ここを決めずに公開すると、半年後には「英語ページだけ去年の料金のまま」という状態になりがちです。
対策として、当社では次のような設計をお勧めしています。
- 更新頻度の高いページは多言語化しない:お知らせ・ブログは日本語のみとし、外国語ページからは案内しない
- 料金や在庫など変わる数値は1か所にまとめる:各言語のページに数字を書き写さず、共通の表を参照する形にする
- 管理画面で言語ごとに編集できるようにする:ページを更新するたびに制作会社に依頼しなくてよい状態にしておく
- 月額の保守に多言語ページの点検を含める:簡易保守は月2万円〜、解析とSEOまで見る改善運用は月5万円〜でお受けしています
保守の中身についてはホームページの保守費用で詳しくご説明しています。多言語サイトは「作って終わり」にしづらいので、公開後の体制まで含めて予算を考えていただくのが安全です。
よくある失敗と、その対策
現場でよく見かけるつまずきを、チェックリストにまとめました。ご自身のサイト(またはこれから作るサイト)に当てはまるか確認してみてください。
- 自動翻訳だけで公開し、商品名や料金条件が意味の通らない訳になっている
- 英語ページはあるが、問い合わせフォームと予約画面が日本語のまま(最後で離脱する典型例)
- 言語切替のボタンが小さく、ページ最下部にあって気づかれない
- 日本語ページだけ更新され、外国語ページの情報が古いまま残っている
- 通貨・日付・電話番号の表記が日本国内向けのまま(国番号が無い、年号表記など)
- 決済手段が国内向けのみで、海外のカードやウォレットに対応していない
- 検索エンジンに言語の区別が伝わっておらず、どちらのページも評価されにくい状態になっている
とくに2つめは損失が大きい失敗です。読んで納得してもらえたのに、最後の入力欄が日本語では、そこで手が止まります。多言語化の範囲を決めるときは、入口(トップ)ではなく出口(フォーム・予約・決済)から逆算することをお勧めします。
海外向けのネット販売まで考える場合は、ECサイトで売上を伸ばすためのポイントもあわせてご覧ください。
進め方(当社の場合)
- 目的と言語の確定:どの国・地域のお客さまに、何をしてほしいのか(予約・購入・問い合わせ・資料請求)を1文にします
- 多言語化するページの選定:出口から逆算して、通常7〜10ページに絞り込みます
- 原稿の準備方法を決める:下訳をこちらで用意するか、お客さま側で手配するかを決めます
- 設計・実装:言語切替、URLの構造、検索エンジンへの言語の伝え方、フォームの多言語化までを行います
- 確認・公開:実際の端末で表示を確認し、フォーム送信までを通しでテストしてから公開します
- 公開後の運用:更新のルールを決め、必要なら保守でページの点検を続けます
この流れは通常のリニューアルと同じ骨格です。全体の進み方はホームページリニューアルの進め方でご説明しています。
宿泊業向けの具体的な構成は旅館・ホテルのホームページ制作、実際の画面の雰囲気は旅館サイトのデモでご確認いただけます。
補助金が使える場合について
多言語対応そのものは「機能の追加」にあたるため、補助金の対象として検討しやすい部分です。一方で、デザインを新しくするだけのリニューアルは対象外になりやすい、という線引きがあります。
2026年8月時点では、デジタル化・AI導入補助金(旧・IT導入補助金)や小規模事業者持続化補助金が候補になります。ただし採択されるかどうか、いくら補助されるかは保証されません。原則として後払い(先に支払い、後から補助)であること、交付決定より前に契約・着手した費用は対象外になりやすいことにもご注意ください。対象になりそうかの目安は補助金活用のページで確認できます。制度の詳細は年度ごとに変わるため、申請前に必ず最新の公募要領をご確認ください。
よくある質問
英語だけ、まず1ページから始めることはできますか?
できます。会社・商品の概要と連絡先をまとめた英語1ページから始める方は少なくありません。今のサイトを活かして追加する形なら、初期セットアップ費(3〜5万円)と多言語対応(13〜20万円)の範囲に収まることが多く、反応を見てから範囲を広げられます。
自動翻訳のツールを入れるだけでは駄目でしょうか?
「読めるようにする」だけなら有効な手段です。ただし、料金の条件・キャンセル規定・アレルギー表記のように誤訳が事故につながる部分と、予約や問い合わせのフォームは、人の手で用意することをお勧めしています。主要ページだけ個別に作り、残りは自動翻訳で補う組み合わせが現実的です。
中国語は簡体字と繁体字のどちらを選べばよいですか?
対象のお客さまで決まります。中国本土向けなら簡体字、台湾・香港向けなら繁体字が一般的です。両方に対応する場合は2言語分の費用と更新の手間がかかるため、まずは実際の予約や問い合わせが多い方から始め、必要になってから追加する進め方をお勧めしています。
まとめ
- 多言語サイトの費用は「1言語あたり13〜20万円」を基準に、ベースの工事と組み合わせて考えます
- 全ページを訳す必要はありません。出口(フォーム・予約・決済)から逆算して7〜10ページに絞るのが現実的です
- 自動翻訳は補助として使い、料金条件・規定・フォームは人の手で用意すると事故を防げます
- 後から苦しくなるのは制作費より更新の手間です。更新しないページを決め、保守の体制まで含めて設計します
- 機能追加にあたる部分は補助金の対象として検討できる場合があります(採択・補助額は保証されません)
「どこまで多言語化すべきか」の判断は、業種と実際のお客さまの動きによって変わります。今のサイトのURLと、海外からの予約・問い合わせの状況を教えていただければ、範囲と金額の当たりをつけてお伝えできます。
費用感のご相談だけでも歓迎です。お問い合わせからどうぞ。他の機能と組み合わせた概算はかんたん見積もりでその場で確認できます。